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ミニコント『秘密兵器、暴走。』 (9)

2010年02月21日 16:11

 それから。
 僕たちが乗ったライトバンは、ひっそりとした細い道をやっと抜けて、国道の大通りを走っていた。
 ただし、ハンドルを握っているのは僕で、助手席に座っているのが大吾だ。
 カーオーディオの時刻はもう二十時四十二分を差していた。
(お腹すいたなぁ……)
 空っ腹の僕の視線の先には、ライトアップされたファミレスとかうどん屋の看板とか、食べ物屋がやたら目に留まる。
 ほんとは、大吾と一緒に『てっちゃん』で何か食べるはずだったんだけどね。
「飛田ちゃん、道はわかっとんのか」
 言い忘れたけど、この車にはカーナビは付いていない。
「ま……まあ、たぶん」
 根拠はないけど、とりあえずそう言っておく。
「それにこれミニコントだから、そこらへんの描写はテキトーでいいよね」
「…………たく」
 呆れたように大吾は大きく息をつく。
 いらだっているのか、大吾はぶっとい腿を貧乏ゆすりのようにカタカタと音を立てて揺らしていた。
 ――で、なぜ僕が大吾の代わりに運転しているのか、だけど。

 さっきのシーンの直後。

「そんなに不満があるなら、僕が次に書く小説の主人公がいる場所にこれから行きましょう。そこで直接その人と話し合ってください。……あ、言うまでもなくその人は男だけど」
「な……」
 口をぽかんと開けた大吾。さらに僕は「ちなみに」と畳み掛ける。
「その男性は、短髪・ラウンドひげ・毛深・ガチムチのオヤジという、典型的なゲイ小説のキャラです」
「……ん……」
 それまで顔をしかめていた大吾の表情がむずむずと動く。
「ま、嫌なら無理にとは言いませんけど」
「だ、誰も」
 沈黙の後、大吾の喉がごくりと鳴る音がした。
「嫌だとは言うとらんだろ……が」

 それが、今から一時間ほど前のことだ。

「えーと、こっちかなぁ……」
 都会って、どこもかしこも同じようなビルとコンビニとファストフード店ばっかりなんだなぁ……。
 とりあえず、次の交差点を左に曲がってみようか。当てずっぽうだけど。
 ウィンカーのレバーを上げる。カチ、カチ、という音が、無言が続く車内に響いた。
「……」
 気詰まりな空気に耐えかねた僕は、ハンドルを握りながら、唐突に大吾に話題を振ってみる。
「大吾は大丈夫なんですか?」
「……ん?」
 不意を突かれたように、大吾は一瞬遅れて答えた。
「だから、次の話の主人公に会うこと」
「おっ、俺もっ、そ、そいつに文句の一つも言ってやらんと、気がすまねえからなっ」
 詰まり気味にそれだけ言って、大吾はまた黙り込む。大きな体をもぞもぞさせて。
「……?」
 どこか様子がおかしい。大吾の。
 息が荒く、足どころか肩までガタガタと震えている。まるで、麻酔銃で撃たれた瀕死の熊みたいだ。
「どうかしたの、大吾」
 車のスピードを緩めて、ちらりと大吾を見ると、
「……ぅぅ……」
 威嚇する大型犬のように低くうなりながら、前のめりで両手を太い股の間に挟み、そこへ何度も抜き差ししていた。
 なんだ、トイレを我慢していたのか。
「ま、まだかっ、飛田ちゃん」
 大吾の声に焦りが増してくる。
「うん、あともうちょっと、かなぁ……」
 そうは答えたけど、何の確証もない。
「………………ぐ、ぅぅぅ……」
 大吾の凶暴なうなり声が頂点に達した、次の瞬間。
「いーかげんにせぃ!!」
「……!!」
 ついにキレた大吾の一喝に、思わず僕の背筋がぴんと伸びて、ハンドルを握り直した。
「そ、そこっ、左だっ、そんでとにかくまっすぐ行けぇぇっ!」
「!! はいッ!!」
 大吾に言われるまま、車の切れ目を待ってそろそろと左折レーンに入り、ハンドルを左に切る。
 そのまま人通りのない夜道をしばらく進むと、数百メートル先にぽつんとある、薄暗い公園の入り口が見えてきた。
「大吾、あの公園に停めればいいの?」
「……ぐ……ぅぅぅ……」
 もはや返事もできないほど小用を堪えているのか、大きな体を身悶えさせている大吾の声に、僕は黙ってアクセルペダルを強く踏んだ。
 そのまま車は、道路に面した公園の駐車場へと入っていく。そこには数台の車はあるけど、なぜか街灯を避けるかのように、みな暗がりの隅に停められていた。
 入り口近くに立つ時計塔は二十一時ちょい過ぎを差していた。
 僕はそれらとは反対側の少し離れた場所に車を停める。
「……っ……しゃぁっ!!」
 同時にドアを勢いよく開けた大吾は、車から外に飛び出していった。大吾の雄臭いにおいと入れ替わりに冷えた潮の香りが、車内に忍び込んでくる。
「あ、ちょっと、大吾ぉ……」
 エンジンを切って車外に出た僕は、あわてて大吾の後を追った。
 広い園内には一面に芝生が広がり、潮のにおいのする木枯らしが直接吹き付けて、鼻の奥と耳の周りが痛くなってくる。
「大吾、トイレはそっちじゃなくて……」
 入り口からすぐの場所にトイレがあるのに、大吾の足はそれとは反対側の木々の茂みへと向かっていく。
 続いて茂みに入った僕が、息も絶え絶えに大吾に呼びかけようとしたとき、茂みを抜け、周りをぐるりと木々で囲まれた薄暗がりで突然、大吾は立ち止まった。
「……っ、んん……」
 その直後、大吾は前掛けを脱ぎ捨てると、デニムのベルトに手を掛けて緩め始めた。
「ええ、ここでするの? ちょ、大吾ーっ!!」
 てっきり大吾がそこで立ちションをするものだとばかり思っていた僕は、次の瞬間、驚きのあまり、言葉と息を飲み下した。
 もどかしげに大吾がデニムと一緒に白いデカブリーフをずり下げたそこには。
「……っ!!」
 完全に反り上がった大吾の巨砲があった。

(つづく)

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※お・ま・た・せ♪(笑)


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