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ミニコント『秘密兵器、暴走。』 (8)

2010年02月20日 14:02

 僕はまたカブトムシになってもがくものの、全身屈強な筋肉で覆われた大吾の体は巨大な岩のようにびくともしない。
 シャツの上から大吾の手が本格的に僕の胸板をまさぐり始めた。
「んん……んんっ、う……むぅぅ……っ」
「んぁ……ぁ、ぁ、ぁぁぁっ」
 大吾の荒い息と僕のうめき声が絡み合い、汗の匂いのこもる車内に間断なく流れる。
「だ……め……っ」
(このままだと……マジでヤラれちゃう……っ)
 大吾は片手で僕のベルトをはずそうとするものの、焦っているのか、なかなか思い通りにいかないらしい。
 ん? ってことは――。
 さっき大吾に押さえつけられた左手に力を入れてみる。
(あ、動く……)
 大吾が手こずっている隙を突いて、僕はわずかな自由が残された左手で、必死にドアのレバーを探した。
 えーと、えーと……こ、ここかな?
 手探りで見つけたいちばん近くのレバーを力任せにグイッと引っ張った、その時。
「あ」
 頂点まで達したジェットコースターが、一気に落ちる、あの感覚。そして、
「うぉぉぉっ!!」
「あぁぁぁっ!!」
 僕の体重と九十キロ超の大吾のそれを支えていた座席の背もたれが、後ろにバターンと倒れた。同時に、僕の体の上に大吾の巨躯がサンドバッグのようにどさりとのしかかり、大吾と顔を突き合わせていた僕の唇は大吾の唇と……。
(……あれ)
 しかし、僕の唇に当たったのは、大吾の唇のむっちりとした感触ではなく、タワシの先のようにチクチクとした固い毛の感触だった。
(これ……無精ひげ?)
 僕がさらに確かめようと唇を突き出すと、いきなりその「タワシ」がものすごい速さで「んんんんんんんーーーーっ!!」と、左右に揺れた。
 わかりやすく言えば、大吾がぶんぶんと首を横に振った……のだと思う。
「い、たたたたたぁぁぁ……ぁぁっ!!」
 唇を大吾のひげでこすられ、思わず後ずさった僕の後頭部でガン、という音がして強烈な衝撃と痛みが走った。
「いったぁ……」
 どうやらビールケースの角に頭をぶつけたみたいだ。軽く涙がにじむ僕の目に、呆然と僕を見おろしている大吾の姿が映る。太い眉をしかめてどうやら心配しているようなのだが、分厚い唇を思い切りすぼめているため、全体としてはどうも微妙な顔つきだ。
 我に返ったのか、大吾はあわてて僕を抱き起こした。
「だっ、大丈夫か、飛田ちゃん」
 すまなそうな声を出した大吾は、大きな手でがしがしと僕の頭を撫でてくれたあと、
「すまん……悪かった」
 そのまま僕の体をぎゅっと抱きしめた。
「……ぁ」
 大吾の胸に顔をうずめた僕の鼻腔に伝わる、大吾の汗の匂い。男の匂い。そして、日の光をたっぷりと浴びた土のにおい。
「……ん」
 あれだけ抵抗したくせに、大吾の太くたくましい腕に抱きしめられて、僕はぼうっとなってしまう。
 しばらく僕は、大吾のにおいと体温と分厚い筋肉の感触を楽しんでから、その耳元で意地悪く尋ねた。
「っていうかさ。大吾さっき、口すぼめてなかった?」
「……ん、んん……っ」
 さっきまでとはまるで正反対の、困ったような声を大吾は出した。
「や、やっぱり、たとえ飛田ちゃんでも、キス……だけはできん」
「どうして?」
「わ、わかっとるだろうがっ。お、俺がキスしてぇのは……た、たが……」
 そこまで大吾が言い掛けたとき。
「……ぁ」
「……ん……」
 僕の右腿の辺りに跨っていた、大吾の股間が急速に、み、漲って……。
「わ、わ、わかったからっ、とにかく離れて!」
「お、おうっ」
 暗闇の中で、僕たちはあたふたともつれあって、やっと元の席に戻った。そして、乱れた呼吸と服を整えていたとき、
(……あ)
 僕はある事実にふと思い当たる。それは――。
 あれほど僕に欲情していたかのように見えた大吾が、実は勃っていなかった、ってこと。
 なのに、「勇一とのキス」という言葉だけで、体がすぐに反応したこと。
(やっぱり……僕じゃ勇一の代わりにならないってことか……)

(つづく)

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