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ミニコント『秘密兵器、暴走。』 (6)

2010年02月18日 12:52

「なっ……なぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
 耳障りなブレーキ音が鼓膜を突く。
 同時に車体がまたガクンと大きく揺れて、ライトバンは道の真ん中で急停止した。
「っ、ぁぁぁぁぁっ!!! び、びっくりしたぁ」
 路上で停車したまま、大吾は放心したように分厚い唇をわななかせ、「な、なぜだ……なぜなんだ……」とだけ繰り返している。
 バックミラーの向こうから、後続車のライトが近づいてきた。
「説明するから……まず車を動かして」
 数秒遅れて、大吾は無言でゆっくりとアクセルを踏んだ。
「同人の世界では、エロ要素が何よりも重要なんです」
 お通夜の席のようにどんよりとした雰囲気の中、僕は続ける。
「大吾たちの話のように、小説で、しかもエロが少ない地味な展開だと、とても人気絵師さんには太刀打ちできない」
「……それなら、俺がいくらでも脱い……」
「もう、昔とは違うんだ」
 首を横に振った僕は大吾から言葉を奪うように遮り、続ける。
「もう、大吾たちの話に魅力的なイラストがつくことも、原稿料が出ることもない」
「……」
 ああ、こんなこと言うつもりじゃなかったのに。
 いつものように二人で馬鹿やって、楽しい「ミニコント」をお届けするはずだったのに。
「……わかってくれるよね、大吾」
「……わかっとる……そんなことはわかっとるっ」
 喉になにか詰まったようにつっかえながらも、大吾は懸命にその奥から言葉を搾り出した。
「だが、俺は、俺としてはっ、飛田ちゃんにずっと……一日中、一月(ひとつき)中、一年中、ずーーーーーっと俺と田上ちゃんのことだけを考えててほしいんだっ」
「……」
 できれば、そうしてあげたいけど、さ……。
 僕が答えに窮していると、大吾は切なげにつぶやいた。
「ずっと前、俺、飛田ちゃんに言ったじゃねえか。『これから一緒に頑張っていこうや』って。……もう忘れちまったのか」
「それは……」
 忘れてなんかいませんよ。そう答えようとしたとき。
 突然、車が止まる。
 窓から外を見ると、
「え……」
 そこには、あの「夢の国」の劣化版のような、妙にメルヘンチックなお城風の建物があった。窓のない独特の形状の外観を、俗悪なピンクのライトが照らし出している。
 ここ……ラブホテルの前だ。
「ちょ……大」
「もし、俺が……」
 今度は僕から言葉を奪い取った大吾は、いったん言葉を区切ると、
「飛田ちゃんと寝れば、これからはずっと俺たちの話だけを、書いてくれるか」
「……!!」
(僕が、大吾と……?)
 あまりのことに、僕の喉がごくりと鳴る。
 緊張で固まった首を僕はぎりぎりと右に九十度ねじり、隣の大吾を見た。
 大吾も、僕をじっと見ていた。
 僕を見つめるその表情には、なんの感情もこもっていない。欲情も、興味も、嫌悪も。
 ただ、空虚な目だ。
 気まずい沈黙が一分ほど続き、そして。
「…………それは、約束できない」
 迷いを残しながら、僕は、そう答えた。
「ん……」
 了承とも否定とも疑問とも取れない鈍い声が大吾の口元から発せられ、そして、前を向き直り、静かに目を閉じた。
「…………」
 瞑想しているかのように、大吾は長く目をつぶっていた。
 闇と薄暗い光に半分ずつ包まれたその顔は、たぶん、これまでに描写したことがないほど苦い表情だった。
 僕はそれ以上の言葉が掛けられずに、大吾の答えを黙って待っていると、
「ぅ……」
「う?」
 そこでカッと目を見開いた大吾は、突然アクセルをグッと大きく踏み込み、
「るぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
 ハンドルを大きく左に切ると、長く切れ込みの入ったカーテンで上半分が覆われている出入口に車を突進させていった。
「うわ、っ!!」
 慣性の法則で後ろにひっくり返った僕の体は、座席とドアの間にすっぽりと挟まる。
 ホテルの屋内駐車場に入ると、車は乱暴な音を立てて急停止した。大吾はエンジンをかけたままサイドブレーキを引くと、無言で運転席のドアを開け、のっそりと外に出る。
(こ、これは……)
「拒否してるのに無理矢理ヤられて体が感じちゃってもう離れられなくなる」、あのパターンだ。
 ああ、きっと僕は大吾のぶっといアレで何度も貫かれた末に、もう大吾のアレなしでは生きられない性奴隷にされてしまうのだ……。
「だ、大吾っ、だめっ、そんな、いきなりこんなところで……」

(つづく)

 WEB投げ銭募集のページに飛びます。

※飛田流危機一発!(笑)

●追記
 本日、デジケットさんの女性向け趣向別ランキングのリーマン部門月間ランキング で、38位に『大吾、走る。』が、40位に『一枚上手』がランクインさせていただきました。
 久々のランクイン(50位内だけど)で作者狂喜乱舞しております。(まぁ、リーマン部門はライバルがきっと少なかったのでしょうね)
 これもひとえに「小説で、しかもエロが少ない地味な展開」なのに拙作を買っていただいたお一人お一人のおかげです。
 本当にありがとうございました!!


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