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ミニコント『秘密兵器、暴走。』 (4)

2010年02月16日 10:47

 通行人と、それまで軽薄な口調で呼び込みをしていたフーゾクの従業員が一斉に振り返る。人々の好奇の視線を一身に浴びた恥ずかしさで、カッと僕の顔が熱くなった。
「ちょ、大吾落ち着いて……」
「毎日毎日朝から晩まで、日に三度はあんたのブログとサイトをチェックしとるわっ!! 『お待たせしました、大吾たちの話の続きを再開します』って告知がいつ出るかいつ出るかってなっ!!」
「……」
 噛み付かんばかりの大吾の剣幕に、僕は一言もない。
 わめき散らして荒くなった息を大吾はしばらく整えてから、また声のトーンを落とした。
「俺が飛田ちゃんと最後に会ったのはいつか、覚えとるか」
「も、もちろん」
 僕はこくこくとうなずく。
「おととしの大晦日から去年のお正月に掛けてだけど」
「で、それからずーーーーーっと、音沙汰なしだったな」
 また、大吾の眉間にしわが寄ってくる。
「で、でも、大吾たちの世界では、勇一と大吾との最初の出会いからまだそんなに時間が経っていませんが」
「そーいう問題じゃないっ!!」
 いらだった大型犬のように、大吾は太い首をぶるぶると激しく横に振った。
「わかっとるんだぞ。今日も飛田ちゃんが何の用で俺に会いに来たか」
「……」
 僕が黙っていると、大吾は毛深くごつい両の手のひらを盛り上がった胸の前で拍手(かしわで)のようにバチンと合わせ、それをむさ苦しい無精ひげがぽつぽつと生え揃う左頬の脇に添えると、
「『大吾ぉー、悪いんだけどぉ、続編はぁもうちょっとぉ待ってくれませんかぁー』」
 声まで甲高くして、大きな図体をこれでもかとくねらせたあと、
「だろがっ」
 と、ことさら野太くドスの利いた声を出して、僕を睨みつける。
(ここまで読まれてたとなると……)
 脇の下と背中に、嫌な汗が流れた。
 ――もうこの手しかないよなぁ……。
 小首を傾げた僕は、なるべく可愛く見えるように、
「……わかったぁ?」
 と、頭一つ上にある大吾の顔を上目遣いで見上げた。
「わかっとるわっ、最初っっっから物の見事にわかっとるわっ!!」
 余計に腹を立てたのか、大吾はまたすたすたと行ってしまう。
 うーん、こうなったら、最後の「奥の手」を出すしかないか……。
「困ったなぁ……」
 離れた大吾の耳にも届くように、その背中に僕は少し声を張り上げる。
「じゃあ大吾は、このシリーズが打ち切りになってもいいんだぁ~」
 大吾の足がぴたりと止まる。そのまま、石になったように動かない。
 いつの間にやら、周りの客引きも通行人も、事の成り行きを見るともなく見つめていた。
「もう……」
 悔しげに(肉食動物のような)うなり声を上げた大吾は。
「飛田ちゃんなんか知らんっ! ずーっと知らんっ!! 一生知らんっ!!!」
 怒声を爆発させると、猛然とアスファルトを蹴り出し、野生の猪のごとく夕闇の彼方にどたどたと走り去っていった。
「……」
 道の真ん中に一人取り残された僕。
 作戦はどうやら失敗に終わったようだ。こうなれば……。
「待ってよぉ、大吾ったらーっ」
 仕方なく僕も大吾を追ってばたばたと走り始めた。
 しかし、ただでさえ運動不足の僕は十数メートル走ったところで息が切れて、足ももつれてきた。
「ま、まっ、てぇ……」
 容赦なく顔に吹き付ける冷たい木枯らしに生理的な涙がじわりと滲み、鼻の奥がつんと痛くなる。
 あっという間に大吾の広い背中を見失った僕は、薄暗い路地裏でがっくりと肩を落とし、両膝に手を置いた。
「…………はぁ、はぁ……」
 遠く離れたフーゾク街の喧騒がかすかに耳に届き、激しく鼓動を刻む胸から送り出される血潮が、どくんどくんと全身を駆け巡ってる。

 ――(飛田ちゃんなんか知らんっ! ずーっと知らんっ!! 一生知らんっ!!!)

「あーあ……」
 僕、マジで大吾に嫌われちゃったのかなぁ……。

(つづく)

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