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Husband of the younger brother

2015年07月17日 15:22

 田亀源五郎先生『弟の夫』①を読み終わったので、僭越ながら感想など。

 なお、完全にネタバレです。未読の方はご注意を。

 また、あくまで、個人的な感想です。


 田亀先生が一般誌にホームドラマ漫画を描く。
 最初聞いたとき、いまいちピンと来なかった。

 だって田亀先生と言えば

 SMゲイ漫画(イラスト・小説)の大家

 でいらっしゃる。
 世界的にも大変知名度の高い巨匠


 その方が、ホームドラマ……?


 ――と、ガチガチのゲイ向け小説しか書いたことがないにもかかわらず、
 BLゲームのシナリオを書いてしまった
 自分が言うのもなんなのだが。


 あ、遅れましたが、簡単に自己紹介など。(検索で訪れた方のために)

 わたくし、飛田流と申します。
 主に男性同性愛者が登場する同人小説を書いております。
 昔は、ゲイ向けサイトに作品を寄稿させていただいたり、(カテゴリー上は)BLゲームのシナリオを書かせていただいたりしたこともありましたが、今では

 特に肩書のない人

 です。


 話を元に戻そう。

 田亀先生とホームドラマ。
 正直
 ここだけの話
 ミスマッチなのでは……
 と思っていた。心の中で。


 なにしろ、それまでの田亀先生(の作品)への個人的な印象は

 コワイ

 こ、これはですね、本気で怖がっているわけではなくて……。そもそも面識ないし。

・作風(特に鬼畜系の作品の印象)
・「ゲイアートの巨匠」という偉人的ポジション


 主にこの二点が……はい。
「偉大すぎる」と言い換えてもいいかもしれない。


 戻したところで、また話は横道へ。
 一昔前の、(ゲイがテーマではない)一般作品におけるゲイキャラの扱いと言えば、


・カムア済の「オカマ」
 女装したゲイバーのマスターとか、ヘアメイクアーティストなど。女以上に女心がわかるという設定
 なよっとした痩せ型か、「しんちゃん」映画シリーズの初期に出てくるような、ゴツい体に厚化粧の、オネエ言葉を使う「オカマ」
 キレると男に戻るという「鉄板ネタ」も

・無条件で変態扱い
 男と見れば誰でも(性的に)襲おうとする、色情魔扱い。非イケメン
 周辺の男たちは(イケメンでもないのに)青ざめて、自分の尻を押さえるなど
 あくまでギャグとして描かれる
 某ゲイビデオと関連付けられて、揶揄されることも多い

・インパクトを重要視したキャラクター付けのひとつ
 公私への影響を考えずに、ゲイを公言している、あるいは周囲にバレバレのキャラ
「カムア済の『オカマ』」と違う点は、ストーリーもキャラも、より一般的な設定に近い
 本人がなぜカムアしているのかバックボーンが見えないまま、周囲にオネエアピールをする
 たとえば、「倍返し」の敵役とか


 が多かったように思う。

 さんざん笑い者にしたうえで、踏みにじっても心がまったく痛まない「道化」としての扱い……と言ったら言い過ぎだろうか。
 逆にゲイがテーマの場合は、


・「世間になんだかんだ言われるけどあたしたちどっこい肩寄せ合って生きてます」話
『おこげ』『メゾン・ド・ヒミコ』など、コメディーを基調にして、ゲイの連帯を描く話

・「私ゲイというだけでこんなひどい目に遭ってるの」話
 ゲイが差別されるシーンが続く、ものすごく重い話
 実在のゲイの半生を紹介した、再現VTR・実録物に多い


 が主である気が。(※いずれも私見)


 正直、(これまでの先生の作風から類推するに)↑のように、ゲイが差別されるシビアーな話なのかな、と思っていた。
 そんな懸念をうっすらと抱きながら、『弟の夫』を読み始めたのだが……

飛田「……むむっ?!」

 良い意味で肩透かしを食らった。
 予想以上にストレートで、正統的な「ザ・ホームドラマ」だったから。(※飛田は、昔から毎週サザ工さんを欠かさず観るほどのホームドラマ・アニメファン)


 一巻のストーリーをざっくり説明すると――

 小学生の女の子・夏菜を男手一本で育てている主人公弥一の元に、ある日マイクというカナダ人の大男が現れる。
 弥一の双子の弟・涼二とカナダで結婚していたマイクは、涼二の死をきっかけに来日し、弥一の家を訪れた。
 弥一は内心マイクに対して差別に近い戸惑いを感じつつも、「弟の夫」ということもあり、しぱらく彼を家に置いてやることにする。
 ゲイのマイクとの同居を続けるうちに、弥一の中で、ゲイに対する意識が徐々に変わっていき……



 現段階(少なくとも第一巻)で、マイクさんが直接的に差別されるシーンはない。
 マイクさんと出会った当初の弥一は、心の中では、「ホモ」という言葉で「弟の夫」マイクさんを罵るものの、それを口に出すこともない。
 もちろん義弟・外国人・弟と双子(精神構造が弟と似ている部分がある?)という事情もあるだろうけど、早い段階で打ち解けて、マイクさんを理解しようとする。

 ドラマ的には、「敵役」を設定するのが盛り上がりやすいのだけど、
「あの外人ホモなんですってー」
 などと近所の主婦がウワサしているなど、これまでの、ゲイをテーマにした作品にありがちなシーンは(今のところ)描かれない。

 そんなほんわかとした優しい空間の中、ストーリーはしみじみと、ゆったり進む。
 まだ始まったばかりなので、マイクさんがいつまで滞在するのか、今後どうしていくつもりなのか――などは不明だが、いずれ語られることになるのだろう。


 ストーリー以外で特筆すべきは、マイクさんの容姿。
 これまで一般誌に出てくるゲイと言えば、↑にも書いたように、

 一昔前は
 厚化粧の「オカマ」

 最近では
 普通よりやや上の容姿~イケメン

 として描かれた(描かれる)ことが多いと思う。

 前者はノンケ側の単なる「無自覚差別」でしかないが、後者であっても、個人的には「BLの延長線」と感じることもある。(もちろん、その中にも優れた作品はあるのだが)
 LGBTではない作家によって描かれるゲイキャラクターは、たとえ好意的に描かれていたとしても、女性に受け入れられるイケメンキャラが多いこともあり、当事者的には、どこか「別世界」感を覚えてしまうのも事実だった。

 一方マイクさんは、ゴツい毛深熊みたいな巨体で、ハーパンを常用していることもあり、毛脛を露出し、むさ苦しさが強調されている。
 ゲイ視点から見れば、王道中の王道設定で

 愛くるしさ200%

 なわけだが、一般向けでこの種のキャラクターを登場させたのは初めてではないか。(調べたわけじゃないけど)

 さらに作中ではマイクさんのシャワーシーンも登場。
 通常、男のシャワーシーンは、性的なニュアンスとは切り離され、さらっと描かれる。
 ところがマイクさんの場合、お尻を含めたバックショットなど、かなりきわどい部分まで描写。
 僕などは「うおっ!」と喜んだものの、一般ノンケ読者はおそらく違和感を覚えたかもしれない。
 田亀先生は、このシーンで、「読んでいる人に『えっ?』って思って欲しかったんです」とインタビューで語っている。 
 こういうリトマス試験紙的な「仕掛け」もちらほら。

 この作品では、これまでの田亀作品に出てこなかったであろうキャラや、コメディチックな表情を見られるのが楽しい。
 曲がりなりにも陵辱物もどきを書いた自分が言うのもなんたが、田亀先生が主にお描きになっておられるそのジャンルが苦手な方にも自信を持ってお勧めできる、良作のホームドラマに仕上がっている。
 どなたかが批評で似たようなことをおっしゃっていたと思うが、直接的なエロティックな部分を抑えることで、キャラへの繊細な気の配り方がより際立った印象。
「ホームドラマ」ファンとしても、今後の展開を大いに期待したい。


 最後に自分の話で恐縮だが、前述したように、僕は以前BLゲームのシナリオを書かせていただく機会を得た。
 半素人で、しかもゲイ向け小説しか書いたことのない自分がそれをさせていただくことに当初大いに戸惑いも感じたが、主人公の外見も含めて、BLカテゴリーに収まらない新奇性に共感を覚え、お引き受けさせていただくことにした。
 僕がどうこうというより、このような試みが業界に広がり、ゲイ向け・BLのカテゴリーの壁が徐々に崩れていけばいいな、という思いもあった。

 我々の試みが、(少なくともシナリオにおいて)ユーザーの女子に受け入れられたかどうかは……だが、『弟の夫』は、世代を問わず読者に受け入れられた好例と言えるだろう。しかも、かなりの反響とともに。


 というわけで、田亀先生にはこれからも、ゲイ向け・BL・一般向け問わず、精力的に活動していただきたいと思う。


 なんか、エラそうなまとめになってしまった。





 あと、『弟の夫』とはまったく関係のない話だが、先生は小説も書いていらっしゃっていて、その中の『鐘馗地獄行』という作品(先生のサイトに全文掲載)の文体が、強く印象に残っている。
 一般的な小説には大抵ある「もの」がこの作品には無くて、そのまま最後まで書き進めていけるところが、並々ならぬ文才の持ち主だな、と感服した。



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