体育教師 極 外伝 『僕の君』 (4・終)

2012年03月22日 10:50

 その時、亘武、すっごく困った表情で黙り込んじまったんス。
 それを見た瞬間、自分、屋上から飛び出して階段駆け降りてたんス。亘武は優しいから、もしかしたらOKしてくれるんじゃないかって甘い考え持ってた自分が恥ずかしくて……。
 そんで、満開の桜の木が立ち並んでいる校庭まで降りてきた時っス。校門に向かって走っている自分の後ろから、「祐斗ーっ!」って呼ぶ声がして。
 振り返ると、息を切らした亘武が玄関にいて。
 立ち止まった自分に、亘武、
「オレも、祐斗のことが好きだ!!」
 って叫んだんスよ。生徒や先生たちがまだたくさん校庭に残っているっていうのに。案の定、みんなポカンとした顔してたっス。
 リアクションができないでいる自分に、汗だくの亘武が駆け寄ってきて、
「だけど、ごめん、オレ、男同士でどうやって……その……するかぜんぜんわかんねえし、やっぱ『恋人』までは無理だ」
 ぺこりと頭下げてくれたんス。
「そ、そうっスよね」
 しょぼんとした自分を見ると、亘武、頭を掻きながら、いきなり肩に腕回してきて、
「……の、亘武!」
 内緒話するみたいにこう言ったんス。
「でも、オレ、こんな別れ方して、もう祐斗と会えなくなるの嫌なんだ。これからもずっと祐斗のこと好きでいてえから……さ」
 その時の自分、一瞬で頭に血が上っちまって、なんて亘武に言ったのか覚えてないんスよ。
 ただ、心に残っているのは、初めて亘武のぶっとい腕に抱きしめられた感触と。
 青い、青い空と、満開の桜の木の下で見た、亘武の最高の笑顔だけなんス。
 その時、同じクラスのお節介な女子が写したのが、この写真ってわけっス。

 ……え?
 それから亘武とはどうなったか、っスか?
 それは、ヒ・ミ・ツっス。
 ……そうスね、あと十回うちの店に飲みに来てくれたら、教えてあげないこともなくはないっスかね。へへっ。
 …………でも。
 いま「こうなってる」のも、自分の運命なんスかね……。
 な、なんでもないっスよ、うっす。
 ……あっ、らっしゃいっス!
 お久しぶりっスねー、他のお店に浮気してたんじゃないっスか?
 ……じ、自分一筋っスか、んなこと言ってもなーんも出ないっスよー。うへへ。
 え、自分、そんなににやけた顔してるっスかねー。……ごほん、そこの兄さんニヤニヤしないっ!
 ……何かいいことがあったのか、っスか?
 へへ、それはっスね。
 この桜に訊いてください、っス。



(完)



 というわけで、ひさびさに小説的なアレをお送りいたしましたが、いかがでしたでしょうか。これまで一切拍手なかったけど。
 さて、終わってから気づいたこと。

 はたして応援になっているのか不明。(汗)

 まあ、書いている人的には、ゲーム内では描写できなかった祐斗の一面を少しだけど書けたのが(自己)満足。エロはゲームでお楽しみください。(笑)
 ただ、あくまで非公式作品なので、「ifストーリー」というか、「こんな話もあるかも」ぐらいの感じで読んでいただければと思います。
 今後、ライターによる『体育教師 極』の二次創作? が続くかどうかは、反響次第……かなぁ。

 そして、元ネタのイラストを描いてくださったガレオさん、どうもありがとうございました。
 人様のイラストに(勝手に)文章を付けさせていただくというのは、僕も初めての経験だったので、イメージを壊さないよう、気を付けて書いたつもりですが……。ちょっとイメージが違っても、そこらへんは大目に……。(笑)

 ゲームをお買い求めいただいた方にも、これから買おうかと思っている方にも、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

 それでは、またいつか(?)。


※拍手コメントありがとうございました! 楽しんでいただけたようでホッとしてます。
 こちら側でも、祐斗のキャラ設定&ストーリーはかなり自由に作らせていただいたので、亘武たちとはまた別の愛着がありますね。
 祐斗はゲームではエロ中心でしたが、彼の純朴な一面も書きたかったな、と思っていたところへ、イメージ通りのイラストを見て、「これは!」と思い、つい勢いで書いてしまいました。(汗)
 自分でシナリオを書いたとは言え、版権物なので、今後も亘武たちの話を書くかはまだわかりませんが……。

体育教師 極 外伝 『僕の君』 (3)

2012年03月21日 09:25

 自分……その時、当然亘武も自分のこと気持ち悪がるって思ったんス。
 だけど、亘武、一瞬きょとんとしてから、
「だから何だっての」
 って、きっぱり言ってくれて。
「へぇー、じゃあ葦沢もホモなんだー」
 って、またもやドヤ顔で言い返されても、
「違うっての」
 そう、怒るんでもなく、笑うんでもなく、フツーにそう言ってくれたんス。
 それからっスね、亘武と仲良くなったのは……。
 もちろん、いろいろ陰口を言う奴らはいたっスよ。でも、亘武はそんなの全然気にしねえで……むしろ、自分をかばってるみてえによく自分に声を掛けてくれたんス。そのおかげで、自分もだいぶクラスに馴染むことができたっス。
 亘武とは三年になっても同じクラスだったんスけど、よく学園の屋上で話したっスね。
 ……なんで、屋上か、っスか?
 自分、一度弁当持ってくるの忘れたことあるんスよ。昼休みに昼飯食べねえでグーグー腹鳴らしてたら、「祐斗、どうしたんだ?」って、不思議そうな顔で亘武が来たんス。
 腹の虫は嘘つけねえっスし、仕方なく訳話したら、かばんの中から弁当取り出した亘武に、校舎の屋上に連れてかれたんス。
「みんなが見てる前じゃ恥ずかしいからな」
 って亘武、弁当を半分こしてくれて……。
 自分、生まれてからこんなにうれしかったことってなかったんス。で、調子に乗って、次の日も弁当“忘れちまった”んスけどね……へへ。
 その日から、亘武と休み時間になると屋上に行っていろんな話、したっスね。好きなマンガの話とか、マイブームとか、将来の夢とか進路とか……。
 自分は卒業したらすぐ東京出て、この街で……二丁目で働くって決めてたんス。亘武には「東京に行く」としか言わなかったっスけどね。そんで亘武は、地元の体育大に行きたいって言って。
 ……そうっス、離れ離れっス。
 でも、亘武は別にそれを悲しむこともなくて……。当たり前っスよね、相手はノンケなんだし、自分らあくまで「トモダチ」なんスから。
 …………へ?
 じゃあ、キ……キスはしなかったの、って……そんな、とんでもないっス! 天に誓って「このころは」、亘武と清らかな交際をしてたっス! エ、エッチももちろんないッス!!
 ……そうスか。兄さんは積極的っスね。でも、その時の自分は、亘武に嫌われるのが怖くて、卒業までずっと、自分の気持ち言えなかったんス。
 そして、卒業式の日、式が終わって、亘武に告るかどうしようか教室で迷っていた自分に、亘武が声掛けてきたんス。
「祐斗、屋上行ってみねえ」
 って。
 自分、その時心臓が一メートル跳ね上がった、って思ったぐらい驚いたんス。まさか、亘武から自分に告ってくるんじゃないか……って。
 そのあと二人で行った屋上に吹いていた、土と桜の匂いが混じり合う春の風と、真っ青な空の色は自分、今でも忘れないっス。
 緊張でガチガチに固まっている自分に、亘武、こう言ってきたんス。
「オレたち、これからも、ずっと『友達』でいような」
 って、右手を差し出して……。
 頭ではわかってたんスよ。ここで「うん」って言えば、誰も傷つかないし、丸く収まるって。でも、自分……。
「……『友達』は嫌っス!」
 つい、そう叫んじまったッス。
「自分、亘武のことがずっと好きだったっんス!」

(つづく)

 ガレオさんに挿絵を書いていただきました。
 http://twitpic.com/8zp3d3


※次回、最終話です。

体育教師 極 外伝 『僕の君』 (2)

2012年03月20日 09:26

 えーと、亘武との出会いは、もう十年以上前になるっスかねえ。自分、学園の二年生だったっスかね。
 その頃にはもう「こっち」の人間だって自覚もあったっスけど、今みたいにゲイタレントがぞろぞろテレビに出てきたり、ネットで簡単に「お仲間」を見つけられるって時代でもなかったっスから、誰にも言えなかったんス。
 初恋、スか? 自分の?
 それはっスね、同じクラスの男子っス。その人は、兄さんと同じぐらいのイケメンでしてね……へへ。男子にも女子にも好かれる人気者で……まあ、自分も好きになっちまったわけっス。
 ……えっ、それが亘武? いやいや、話には順序ってものがあるんスから、まあ、黙って聴いててくださいっス。
 好きになったのはいいとして、自分の気持ちをどうやって彼に伝えればいいのか……迷うっスよねぇー。相手が女子か、自分と同じゲイだったら、まだよかったんスけどね。
 自分、こう見えて上がり症っスから、口で想いを伝えるのはぜーったいムリ。なら、ここは古典的に行こうってことで、ラブレターをその人に送ることにしたんス。
 内容? うーん、あんまりよく覚えてないんスけど、確か……「僕を君の一番の友達にしてください」って書いたんスかね。
 な、なんで笑うんスかっ! これでも一週間、考えに考え抜いたんスよ!!
 そんで、そのラブレター、書いただけじゃだめで、送らないといけないじゃないスか。
 学園の靴箱? 扉がついてるわけじゃないし、すぐバレちまうっスよ。郵便も、家族の人に見られちまう可能性あるし……。そこで自分考えたんス。
 うちの学園って、男子用と女子用のハンガーが教室の中にあって、そこにみんな制服を掛けておくんスけど、みんなが授業で体育館に行った隙に、彼の制服のポケットにラブレターを忍ばせておいたんス。
 ところが翌日のことっス。自分が朝、教室に入ったら、クラスのみんなが集まってて、自分の顔見るなり、ニヤニヤ笑うんスよ。
 その中心にいたのは、クラスのボス気取りの超意地悪男子。そいつの手に、自分が書いたラブレター……あったんス。そいつ、自分の姿見ると、これ見よがしに見せびらかして。
 もーう自分、頭真っ白っス。なんでそいつが自分のラブレター持ってるのか、まるでわけがわからない。
 理由はね、今でもわからないんスよ。たぶん、自分が間違えて、そいつの制服のポケットに入れちまったんだと思うスけどね。
 いや……彼はそんなことをする人じゃないっス。自分が間違えたん……ス、よ。きっと。
 ただ、この日を境に、彼から露骨に避けられるようになったのは……事実っスかね。
 このことがきっかけで自分、クラスのみんなにからかわれるようになって……友達がいなくなっちまったんス。一学期の終わりのことっスかね。
 ……え? 亘武はいつ出てくるんだ、っスか?
 ずーっと先っス。だってこのとき自分、まだ亘武と出会ってないんスから。ああ、亘武とは最初から同級生じゃないんスよ。
 ……わかったっス、じゃ、夏休みのエピソードを飛ばして……。
 亘武がうちのクラスに転校してきたのは、二学期に入ってすぐのことっスかね。亘武、スポーツ万能で性格もまっすぐで誰にでも優しいから、たちまちクラスの人気者になったんス。
 …………うっす、初めて見た時から、心の中では亘武のこと、気になってたっスよ。でも、自分みたいなのが好きだってみんなに知られたら、今度は亘武に迷惑掛けるじゃないっスか。だから、自分、なるべく亘武と目を合わせないようにしてたんス。遠くからそぉーっと見つめる、って感じで。
 と・こ・ろ・が・っ・ス!
 ああ、近づきすぎっスね、すんませんした。……でも、そんなに顔しかめなくても……。
 えーと、どこまで話したっスかね。
 そうそう、「と・こ・ろ・が・っ・ス!」、からっスね。
 イジイジしていた自分に、なぜか亘武のほうから話しかけてきてくれたんスよ。
 自分、もーう内心はうれしくて仕方なかったんスけど、ほら、また前みたいに面倒なことになっちゃいけないから、亘武とあんまりしゃべれなかったんス。
 そこへ来たんスよ。前に自分が間違えてラブレターを渡した奴と、その取り巻き連中がドヤ顔で。
「おい、葦沢、そいつ男が好きな男なんだぜ」

(つづく)

 ガレオさんに挿絵を書いていただきました。
 http://twitpic.com/8zp2jv

体育教師 極 外伝 『僕の君』 (1)

2012年03月19日 11:15

 あっ、らっしゃいっス!
 兄さん早いっスねー、今日一番乗りのお客さんっスよ。大学もう終わったんスか。
 へぇ……今日はバイト帰りなんスか。自分も、昼はスポーツクラブでバイトしてるんスよ。よかったら今度見学に来てみないっスか? 筋肉がついてますますモテモテになるっスよ。へへ。
 ……い、いい男がいるか、っスか? うーん、兄さんの好みのタイプにもよるっスけど……そもそもうちのクラブ、「お仲間」向けじゃないっスからねー。
 えーと、兄さんはセットで良かったんスかね?
 うっす、じゃあ、お飲み物は……コーラで。今日のお通しは牛すじの煮込みっス。三日かけて煮込んでる自信作っスよ。……え、別の物がいい? そりゃまあ、コーラとは合わないかもっスけど……。それじゃ、フライドポテトなんかどうスか。
 ……あ、これスか。桜の枝を活けてみたんス。ほら、つぼみがこんなに膨らんでるから、来週にはきっと花を咲かせてくれると思うっスよ。またその時に見に来てくださいっスね!
 ……違うっス違うっス、勝手に失敬してきたわけじゃないっス!
 昨日、店に来る前、近くの公園で、桜の剪定をやっててっスね。係の人からちゃんと許可もらって、一本いただいてきたんス。
 ……?
 なんスか、人の顔見てニヤニヤしてー。そんなに兄さん、桜が好きなんスか? ……違う?
 あっ、わかったっスよ、兄さんもそろそろ大人の魅力に目覚めたんスね。
 お、おじさんには興味ないって……失礼しちゃうっス!!
 いいっスか、この篤永祐斗とくながゆうと)、これまでいろんな世代の殿方と付き合ってきたんスよ。つまり、どんな相手にも合わせられる適応能力に優れているってことっス! たとえば、上は四十五十のダンディーなナイスミドル、下は大学生どころか、さらに下の……あ、いや、なんでもないっス。
 ……落し物? あ、兄さん店になんか忘れたんスか?
 じゃなくて……自分スか? 自分は大丈夫っスよー。いつも家から出る前に自分、こうやって必ず「指差し確認」するんス。財布よーし、ケイタイよーし、カード入れよー……。
 …………あれ?
 って、カード入れが……ない、っス……。
 あああ……どこスかどこスかっ?! 自分ここにいるから、パスモ使って駅からは出てきたんスよね?! ということは、駅から二丁目の途中で……。
 あっ、あのっ、すんません兄さん、ちょっと自分、駅まで戻ってみるんで、店のほう、ちょ、ちょっとだけお願いするっス!!
「ママ」っスか? またぎっくり腰の具合が悪くなっちまってっスね、「しっぽり温泉」で療養中なんス。だから今、自分が店を任されてて……。
 …………へ?
 なんで兄さんが自分のカード入れ持ってるんスか? まさか、兄さん……。
 店の玄関の前に落ちてたんスか? コレが?
 いや、ちょっと待ってくださいっスよ。うーん……。
 店に着く、ドアを開ける……の前に、ママから預かってる店の鍵をズボンのポケットから出す。
 ……ん?
 鍵・を・出・す・時に……。
 ああーーーーーっ!! そん時にポロッ、って床に落ちたんスね。ああ……自分、なんたるマヌケなことを……。
 でも、兄さんが拾ってくれて本当に助かったっス。じゃあ、今日は何かもう一品サービスさせてもらうっスね。
 えっ……キ、ス……それは、ちょっと、心の準備が……。
 あ、じょ、冗談スか、兄さんも人が悪いっスね。ははははは…………はぁ……。
 はい、確かにカード入れ受け取りましたっス。あの……まさかとは思うんスけど、中とか……見てないっスよね。
 ああ、いいんスいいんス、なんでもないっス。
 …………へ? なんでそれを兄さん……。
 や……やっぱり中の写真、見たんスねーーーーっ!! あわわわわ……。
 も、元カレとか、そんなんじゃない……っス……。むうぅぅ……。だから、昔の話っスよぉ。
 うっす、お察しの通り、同じ学園の同級生っス。
 ……聴きたい? 何をスか?
 なっ、なっ、馴・れ・初・めぇぇ……自分と亘武のぶ)、のっスか?
 あっ、いや、亘武ってのは、自分の隣で、肩に腕回してる……いや、あのぅ……。
 ……おじさんの昔話なんて、つまんないっスよぉ。
 それでもいい? むしろそこを聴きたい?
 はぁ……わかったっス。兄さんには負けたっス。
 だけど……もし、誰かにしゃべったら、以後うちの店には出入り禁止っスからね!

(つづく)

 ガレオさんに挿絵を書いていただきました。
 http://twitpic.com/8zp1lv


こちら(2012年2月14日分)に掲載された、BLゲーム『体育教師 極』登場キャラクター・亘武と祐斗の学生時代のツーショット(原画担当・ガレオさん画)をモチーフにした、アンオフィシャル(非公式)ストーリーです。
 あくまで飛田流個人の同人作品ですので、ゲーム内の設定とは異なる場合があります。

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